AIに文章を作らせるとき、どこまで任せてよいのか。編集部の答えは、言い回しや構成の候補は広く任せ、事実・約束・評価を確定するところは人が引き受ける、です。句読点まで全部直す必要はありませんが、読みやすい文章だから内容も正しいとは限りません。
一文の中でも、任せられる部分は違う
次は、編集方法を説明するために作った架空の商品案内です。実在製品の仕様や実測結果ではありません。
「このレコーダーはどんな会議でも正確に記録し、議事録作成時間を半分にします。月額料金もかからないので、全員におすすめです。」
文章は滑らかですが、四つの問題があります。「どんな会議でも」は録音条件を無視し、「正確に」は誤認識の可能性を消しています。「半分」は実測の根拠がなく、「月額料金なし」は利用量やプランの条件が抜けています。最後の「全員」も、既存ツールで足りる人を無視しています。
確認できた資料が「録音から文字起こしが可能、無料枠は月300分」であれば、たとえば次のように直します。
「録音した会話から文字起こしの下書きを作れます。人名や金額は原音確認が必要ですが、会議後のメモ整理を始めやすくなります。60分の会議を月4回だけ文字起こしする想定なら240分で、月300分の無料枠内です。対面会議の記録が負担な人は検討できます。」
弱くしただけではありません。誰にとって、何が便利か、いくらかかる条件なのかが分かるようになっています。販売の文章も、言葉を強くするより、使う場面を具体化したほうが判断につながります。
AIへ任せやすいのは、答えの候補を増やす仕事
見出しの案を複数作る、長い説明を短くする、専門用語を言い換える、質問の順番を変える。こうした作業は、意味が変わっていないかを比較しやすい範囲です。元の資料を渡し、「情報を足さずに、初心者へ説明する」と頼むと目的がはっきりします。
一方、価格や仕様の確定、受講すれば転職できるといった成果の保証、健康状態の判断は、表現の問題ではありません。根拠や専門的な確認が必要です。AIが説明できたから正しいとせず、不明なら確認できないと書きます。
確認は、全部を同じ重さで行わない
公開前は、まず読者の行動を変える記述から確認します。金額、期限、対象者、購入・解約条件、注意すべき症状などです。次に、主語や比較対象が抜けていないか、結論が記事の質問に答えているかを読みます。最後に表記や細かな文体を整えます。
この順番なら、重要な誤りを残したまま、語尾だけを何度も直す状況を減らせます。他者の文章や画像に似すぎていないか、参照素材の利用条件も別途確認してください。文化庁のAIと著作権に関する資料は、検討すべき論点を知る入口です。
「自分が読者なら、次に何をするか」で読み直す
最後に、記事を初めて読む人のつもりで冒頭と結論を見ます。答えが分からないなら、説明不足か、対象が広すぎます。逆に全員へ同じ商品を勧めているなら、選択条件を削りすぎているかもしれません。
AIの原稿を人間らしくするために、無理に雑談や体験談を足す必要はありません。具体的な疑問へ、必要な根拠と自分の判断で答える。そこが編集する人の仕事です。作成前の資料整理は根拠先行の制作フローで確認できます。





