生成AIを授業で使うか決めるとき、便利な機能の一覧から始めると、誰が、何のために、どの情報を入れてよいかが後回しになります。無料で開けるサービスでも、学校が児童生徒へ利用させてよいとは限りません。
結論は、利用前に「目的、学校の方針、サービス条件、アカウント、入力情報、出力確認、著作権、説明と停止条件」の8項目を1枚にし、一つでも確認できなければ授業での児童生徒利用を始めないことです。 不明は「禁止」と断定せず、確認待ちとして校長、教育情報セキュリティ管理者、教育委員会など所定の確認先へ回します。
この8項目と3段階判定は、文部科学省のガイドラインを学校内で確認しやすくするWORK EDITの整理です。全国一律の承認様式ではありません。
最初に「AIを使うこと」を目的にしない
文部科学省のVer.2.0は、児童生徒の学びで生成AIを使う場合、学習指導要領に示す資質・能力の育成や教育活動の目的に効果的かを吟味し、生成AIの利用自体を目的にしない考え方を示しています。
まず、AIを外しても説明できる学習目的を書きます。
| 曖昧な書き方 | 先に決める内容 |
|---|---|
| 生成AIを体験する | 誤った回答を根拠と照合し、誤りの種類を説明する |
| AIでレポートを書く | 自分の仮説に足りない観点を探し、一次資料で確かめる |
| AIで英語を学ぶ | 自分の英文を修正し、変更理由を説明する |
目的が「早く完成させる」だけなら、本人が考える工程や評価する能力が消えていないか見直します。
利用前に確認する8項目
1. 学習目的とAIの役割
どの力を育てる授業か、AIは途中の支援か、最終成果物の作成に使うかを決めます。最後に児童生徒本人が何を判断・説明するかを一文で書きます。
2. 教育委員会・学校の方針
教育委員会の方針、学校の情報セキュリティポリシー、端末・アカウントの利用規程を確認します。担当教員だけの判断で私用アカウントや私用端末へ切り替えません。
3. サービスの年齢・保護者・利用条件
最新の利用規約で、年齢制限、保護者の同意や理解が必要となる条件、生成物の利用条件を確認します。文部科学省のガイドラインは、サービスの約款等からリスクを許容できるかを校長・担当教師が確認し、必要に応じて保護者の理解を十分に得た上で、教師の指導監督下で利用させるよう示しています。
「保護者へ伝えたから利用可」「無料だから利用可」とはせず、学校の方針とサービス条件の両方を満たすかを確認します。
4. 使うアカウント・端末・保存先
学校が認めたアカウントと端末か、会話履歴や入力内容がどこに保存されるか、学習利用を制御できるか、削除・問い合わせ方法があるかを確認します。ブラウザや検索サービスに組み込まれたAIも、意図せず使う可能性を含めて扱います。
5. 入力しない情報
児童生徒の氏名、顔写真、連絡先、成績、健康・家庭事情、他人の作品、校内だけの資料などを、そのまま入力させません。文部科学省は児童生徒が使う場合、氏名や写真等の個人情報をプロンプトへ入力させないよう求めています。
氏名だけを消しても、学年、部活、出来事、写真などの組合せから個人を識別できることがあります。入力候補を詳しく分ける場合は、生成AIに入力してはいけない情報の5項目へ戻って確認します。
6. 出力の確認方法
生成AIの出力は参考の一つであり、最適解や正解とは限りません。児童生徒が、教科書、公的機関、授業で指定した資料などへ戻り、事実と根拠を確認できる課題にします。教員も、自分で適切性を判断できる範囲で使います。
7. 著作権と公開範囲
入力する著作物と生成物の扱いを、授業内、学校内共有、学校サイト、SNS、外部コンクールに分けます。授業の過程で認められる利用と、授業外への公開は同じ条件とは限りません。既存作品に似せる固有名詞・作家名等の指示を避け、生成に使った指示と修正過程を確認できる状態にします。
個別の利用が著作権法上認められるかは、この記事だけで判断しません。文化庁の最新資料、応募要項、学校の担当者を確認します。
8. 説明・記録・停止条件
児童生徒と保護者へ、利用目的、使う場面、入力しない情報、困ったときの窓口を説明します。授業前には、次の停止条件を共有します。
- 許可されたアカウントへ入れない
- 年齢・保護者・規約条件を確認できない
- 個人情報や他人の未公開情報が必要になる
- AIの出力を指定資料で確かめられない
- 成果物の権利や外部公開条件が判断できない
- 誤出力、差別的な表現、意図しない公開が見つかった
停止は失敗ではありません。入力・提出を止め、教員または決めた窓口へ戻すための授業手順です。
1枚の利用前確認票
| 確認項目 | 記録する内容 | 判定 |
|---|---|---|
| 学習目的 | AIなしでも説明できる到達点 | 利用可/確認待ち/利用しない |
| 学校方針 | 規程名、確認者、確認日 | 同上 |
| サービス条件 | 年齢、保護者、規約、生成物利用 | 同上 |
| 環境 | アカウント、端末、履歴・保存 | 同上 |
| 入力情報 | 入力可、確認待ち、入力しない | 同上 |
| 出力確認 | 照合する教材・一次資料 | 同上 |
| 権利 | 入力資料と公開範囲 | 同上 |
| 説明・停止 | 説明先、窓口、停止条件 | 同上 |
8項目すべてが利用可でも、すべての授業・課題で自動的に使えるという意味ではありません。授業ごとに学習目的と評価方法を確認します。
安全な実データを用意できない場合は、会社の資料を使わず生成AIを練習する方法を参考に、実在の児童生徒・学校・出来事に由来しない教材へ切り替えます。職場向けの記事なので、学校では教育委員会・学校の規程へ読み替えてください。
利用可の後に課題文を設計する
学校側の条件が揃っても、レポートをAIの文章の提出にしない設計が必要です。AIに任せてよい範囲、使用記録、根拠確認、修正履歴、本人の説明は、生成AIを使ったレポート課題の出し方で課題文へ落とし込めます。
次にすること
検討中の授業を一つだけ選び、8項目の確認票を埋めてください。「不明」を空欄のまま残さず、確認待ちと確認先を書きます。年齢・保護者・規約、入力情報、権利・公開範囲のいずれかが確認できない場合は、児童生徒にサービスを開かせる前で止めます。





