家族そっくりの声で「事故を起こした」「今日中にお金が必要」と電話されたら、声の違和感だけで詐欺を見抜けるでしょうか。
結論は、声が本物かを耳で判定しないことです。金銭や暗証番号を求める緊急連絡は、いったん切り、自分が保存していた番号へかけ直し、別の家族にも確認する。この3動作を電話が来る前に決めてください。
IPAは2026年3月の資料で、本物と見分けにくい偽画像・動画・音声が作られる状況を前提に、重要な送金などを促す依頼では二重・三重の確認を欠かさないよう案内しています。消費者庁も、生成AIによるそっくりな音声を使って知人になりすます詐欺の可能性を挙げています。
怖がるだけでは、緊急電話が来た瞬間に動けません。家族で使うのは、AIを検出する道具ではなく「確認の順番」です。
家族で決めるのは3つだけ
1. 電話を切る条件
家族、警察、弁護士、病院などを名乗っていても、次の一つでも出たら、その場で送金や情報提供をしないと決めます。
- 今日中、今すぐ、電話を切らずに対応してと言われた
- 事故、逮捕、入院など強い不安をあおられた
- 銀行振込、現金、暗号資産、ギフトカードなどを求められた
- 暗証番号、認証コード、口座情報、本人確認書類を求められた
- 家族や銀行員へ話さないよう指示された
警察庁は、親族や警察官等を装って金銭を求める手口を案内し、電話でお金の話が出たら一旦切って家族などへ相談するよう勧めています。切ることは、家族を見捨てることではありません。確認できる経路へ移るための動作です。
2. かけ直す番号
着信履歴や相手が口頭で伝えた番号ではなく、自分の連絡先に以前から保存していた本人の番号を使います。本人に届かなければ、配偶者、兄弟姉妹、勤務先など、以前から知っている別経路へ確認します。
家族ごとに、紙または端末の連絡先へ次を残してください。
| 確認する人 | 第一連絡先 | 届かないときの第二連絡先 |
|---|---|---|
| 子・孫など | 以前から使っている本人番号 | 配偶者、親、勤務先など |
| 高齢の親 | 本人番号 | 同居家族、近くの親族など |
公開記事には実際の番号を書かず、家庭内だけで管理します。電話番号表示そのものも偽装される可能性があるため、「表示が本人の番号に見える」だけで確認完了にしません。
3. 一人で送金しない金額・場面
金額の大小にかかわらず、「電話やメッセージで突然頼まれた送金」は一人で決めない、と統一するのが簡単です。少なくとも別の家族一人へ確認するまで、ATM、ネットバンキング、コンビニへ移動しません。
家族全員が同じルールを知っていないと、詐欺師は最も急いでいる人、断りにくい人へ圧力をかけます。「親だけに注意してもらう」のではなく、頼む側になる子や孫も、緊急時にどの経路で連絡するかを共有してください。
合言葉は使ってよいが、折り返しの代わりにはしない
家庭内の合言葉や、本人だけが知る質問は補助になります。ただし、次の理由から単独の本人確認にはしません。
- SNSの投稿や過去の会話から答えを推測されることがある
- 家族が合言葉を忘れたり、第三者へ話したりすることがある
- 本当に動揺している本人が、うまく答えられない場合がある
合言葉が一致しても、送金が絡むなら電話を切り、保存済み番号へかけ直します。合言葉が違っても、その場で相手を追及せずに切ります。
高齢の家族には「知らない電話へ出ない」入口対策も加える
警察庁は、固定電話の番号表示・非通知拒否、海外と固定電話を使わない人の国際電話利用休止、携帯電話での知らない番号の着信拒否を案内しています。
入口対策は有効ですが、知っている番号に見せるなりすましまで完全に防げるとは限りません。設定だけで安心せず、電話に出た後の3動作も一緒に紙へ書き、電話の近くへ置きます。
お金・暗証番号の話が出たら
1. その場で答えない
2. 電話を切る
3. 保存済み番号へかけ直す
4. もう一人へ相談する
実際に不審な電話が来たら
声が似ている、番号が同じ、家族しか知らない情報を話した、という一つの材料だけでは判断しません。AI音声詐欺の見分け方で、緊急性、秘密、支払方法、折り返し拒否の組み合わせを確認してください。
すでに銀行振込をした場合は、本人確認の議論を続ける段階ではありません。AI音声詐欺で銀行振込してしまった直後の対応へ進み、振込先金融機関と警察へ連絡してください。
AI生成物を外見だけで信用せず、出典と別経路で確認する考え方は、AI生成記事で避けるべき誤情報と架空体験でも整理しています。
結論:家族を守るのは声の判定力より、確認経路
AI音声詐欺への家庭対策は、声の不自然さを覚えることではありません。「切る・保存済み番号へかけ直す・別の家族へ横に確認」を全員で共有することです。
今日やることは、家族一人につき第二連絡先を一つ決め、突然の送金依頼は一人で実行しないと伝えることです。合言葉や着信拒否は、その基本動作を補うものとして使ってください。





