金融機関への緊急連絡に加え、警察への相談も、すべての証拠がそろうまで待つ必要はありません。手元にある情報から相談し、追加で必要な資料を確認してください。これから被害が起きそうな場合や緊急の危険がある場合は、通常の記録整理より緊急対応を優先します。
取引先や社長を名乗る相手へ送金した後、ビジネスメール詐欺かもしれないと気づいたら、何から始めるべきでしょうか。
結論は、追加送金を止め、送金元金融機関へキャンセル・組戻しを至急相談し、同時に社内責任者へ報告することです。次にメール・ヘッダー・送金記録を保存し、取引先へ別経路で確認して、警察へ通報・相談します。 返金の可否は状況で変わるため、この記事では成功を約束しません。
警察庁は、攻撃者の口座へ送金してしまった場合、速やかに送金元銀行へ送金キャンセルや組戻しを依頼するよう案内しています。IPAの事例には、銀行への通報やメインバンクを介した情報連絡によって振込処理を停止できた例があります。ただし、同じ結果になるとは限りません。
0〜30分: 追加送金を止めて金融機関へ連絡する
相手から「解除手数料」「別口座へ送り直せば戻せる」「確認のため少額を」と言われても、追加送金しません。相手とのやり取りを続けて時間を使わず、次を準備して送金元金融機関へ連絡します。
- 振込日時、金額、通貨。
- 振込先銀行、支店、口座番号、名義。
- 自社の振込受付番号や明細。
- 詐欺の疑いに気づいた時刻。
- 担当者名と折り返し先。
金融機関へは「ビジネスメール詐欺の疑いがある送金」と伝え、キャンセル・組戻しなど可能な手続を確認します。インターネットで見つけた非公式番号ではなく、契約書、通帳、公式サイト、銀行アプリなど既存の正規窓口を使います。
同時進行: 社内の責任者へ事実を報告する
担当者一人で回収交渉や原因調査を進めると、別口座への追加送金、証拠の上書き、取引先への誤連絡が起きかねません。経理責任者、情報システム・セキュリティ担当、法務または経営層など、自社の事故報告ルートへ連絡します。
最初の報告は、推測を混ぜず次の三つに分けます。
| 区分 | 記録例 |
|---|---|
| 確認済み | 何時に、誰の操作で、どの口座へ、いくら送金したか |
| 未確認 | 送信元アカウントが侵害されたか、資金が移動済みか |
| 実施中 | 銀行へ組戻し相談、証拠保存、取引先への別経路確認 |
「AIで作られたメールだった」「取引先が漏えいさせた」と、根拠のない原因を確定しません。
証拠は削除・転送せず保存する
警察庁は、攻撃者からのメールとメールヘッダー情報を保存し、取引先にも関連メールの保存を依頼するよう案内しています。組織の保全手順に従い、次を残します。
- 原本メールと完全なメールヘッダー。
- 添付ファイルは開かず、受信時のまま管理者へ渡す。
- SNSのトーク、プロフィール、QRコード、送金指示の画面。
- 振込受付・処理・組戻し相談の記録。
- 電話した窓口、担当、時刻、回答。
- 最初の受信から発覚までの時系列。
不審メールを全社員へ転送して周知すると、危険なリンクや添付が拡散します。周知はシステム担当が安全なスクリーンショットや件名・特徴へ置き換えて行います。
取引先へ別経路で確認する
取引先とのメールスレッドが侵害されている可能性があるため、問題のメールへ返信しません。過去の契約書、名刺、取引先台帳などにある連絡先から、次を確認します。
- 口座変更や請求書の送付が実際に行われたか。
- 取引先側にも同じメールや不審なログインがないか。
- 取引先側で保存できるメール・ヘッダー・時系列があるか。
- 以後の正規連絡窓口をどこにするか。
確認した相手の部署、氏名、日時と回答を記録します。内部犯行など複数の可能性が残る場合があるため、原因調査の共有範囲は社内責任者が決めます。
警察へ通報・相談する
警察庁は、ビジネスメール詐欺の被害に遭った場合、関連メール等を持参して最寄りの警察署へ通報・相談するよう案内しています。サイバー事案はオンライン窓口もあります。持参物や日時は事前に担当者へ確認します。
相談時に渡せるよう、次を一つの一覧にします。
- 法人名、担当部署、連絡先。
- 送金記録と金融機関への連絡結果。
- メール原本、ヘッダー、SNS記録。
- 取引先への確認結果。
- パスワード入力、添付開封、リンククリックの有無。
- 端末やアカウントで確認済みの異常。
メールアカウントと端末も調べる
警察庁は、ウイルスチェック、メールアカウントのパスワード変更、不正アクセス、外部転送、見慣れない振り分け設定の調査を案内しています。自己判断でログを削除せず、社内の管理者または委託先に引き継ぎます。
認証情報を入力した事実がある場合は、組織の手順に沿って至急変更し、使い回しがあれば影響範囲を確認します。添付を開いた場合は、IPAの案内に従い、管理者へ連絡し、必要な初動を行います。端末のネットワーク切断が必要かは、証拠保全と業務影響を含め管理者の指示を受けます。
次にすること
今すぐ、送金元金融機関の正規窓口と社内事故報告先へ連絡してください。その後、次の順番を紙または事故記録へ書き出します。
追加送金停止 → 銀行 → 社内責任者 → 証拠保存 → 取引先の別経路確認 → 警察 → アカウント・端末調査
まだ送金前で社長名の指示に迷っている場合は、LINE誘導を止める社内確認ルールへ戻ってください。取引先から口座変更が届いた段階なら、振込先変更メールの別経路確認を使えます。





