社長や役員を名乗るメールで「LINEグループを作って」「至急、残高を教えて」「取引先へ代わりに振り込んで」と言われたら、どう対応すべきでしょうか。
結論は、メールや移動先のSNSだけで本人確認を完了させず、送金を保留し、登録済みの電話番号など別経路で本人と承認者へ確認することです。 文面が自然か、社長名が正しいか、相手がAIを使ったかを当てるより、送金ルールを例外なく通す方が再現できます。
警察庁は2026年2月、実在する経営者等を名乗るメールからSNSグループへ誘導し、口座残高を聞いた後に送金させる手口を注意喚起しました。IPAも2025年12月16日から2026年3月10日までに、この手口の相談を106件受けたと公表しています。
最初の10分で止めること
次のいずれかがあれば、送金、残高回答、QRコード返信、添付開封を止めます。
- 会社の通常手順を飛ばし、秘密の案件や至急対応を理由にする。
- メールからLINEなど別サービスへ移すよう求める。
- グループに経理担当者を入れる、口座残高を答えるよう求める。
- いつもの承認者を外す、ほかの人に相談しないよう求める。
- 表示名は社長でも、送信元がフリーメールまたは見慣れないドメインである。
この時点で「詐欺と断定」する必要はありません。正当な依頼でも確認を通せるよう、保留と別経路確認を通常業務にします。
本人確認は同じ会話の外で行う
届いたメールへの返信や、相手が作らせたSNSグループでの質問は、攻撃者との会話を続ける可能性があります。IPAは、送信元とされる人へ確認する場合、届いたメールへ返信せず、電話など別の方法を使うよう案内しています。
確認は次の順番にします。
- 送金と残高回答を保留し、依頼画面を閉じる。
- 社内の不審メール報告先へ、受信時刻、送信元、要求内容、操作の有無を伝える。
- 社内名簿や既存連絡網に登録された番号から、名乗られた本人へ連絡する。
- 経理責任者または二人目の承認者へ、金額、目的、受取人、口座、期限を確認する。
- 既存の稟議・支払システムに正規依頼がない場合は実行しない。
メール本文や署名に書かれた電話番号は、確認先として使いません。攻撃者が用意した連絡先の可能性を排除できないためです。
AI生成かを見抜くことを合否条件にしない
内閣サイバーセキュリティセンターのハンドブックは、生成AIにより偽メールの文面と正規メールの文面を見分けることが難しくなっていると説明しています。一方、個別のメールがAI生成かどうかは、通常の受信者には確認できません。
そこでWORK EDITでは、文章の不自然さを補助情報にとどめ、次の4点を主判定にします。
| 判定軸 | 確認すること | 止める条件 |
|---|---|---|
| 経路 | 通常の申請・連絡経路か | メールから未承認SNSへ移す |
| 権限 | 既定の承認者が参加しているか | 一人だけで処理させる |
| 対象 | 受取人・口座・目的が登録情報と一致するか | 新規口座や説明できない名義 |
| 本人 | 登録済みの別経路で確認できたか | 同じメール・SNS内だけの回答 |
文法や敬語が正しくても、この4点を通らなければ保留します。逆に、本人からの正当な依頼でも、例外を口頭だけで通さず記録を残します。
社内ルールは短い停止文まで決める
現場が迷わないよう、確認項目だけでなく返信前の停止文を決めます。
送金依頼は社内規程に基づき、登録済み連絡先での本人確認と二者承認後に処理します。確認完了まで送金・残高回答は保留します。
この文を相手へ送るかどうかも、まず社内報告先へ確認してください。不審メールを削除する前に、組織の証拠保全ルールがある場合はそれに従います。警察庁は、SNSへ誘導された場合、利用サービスに通報したうえで速やかにグループから退出するよう案内しています。
すでにQRコードを返した、残高を答えた場合
まだ送金していなくても、やり取りを続けず、社内のシステム・セキュリティ担当へ連絡します。本文のURLを開いた、添付を開いた、認証情報を入力した場合は、その事実を隠さず操作時刻と端末を伝えます。
送金まで行った場合は、通常の不審メール報告だけでは足りません。ビジネスメール詐欺で送金した後の連絡順へ進み、送金元金融機関へのキャンセル・組戻し相談、証拠保存、警察相談を急いでください。
次にすること
今日中に、経理・総務・情報システムで次の一行を決めてください。
「経営者名の依頼でも、SNS移動・残高回答・新規口座への送金は、登録済み電話番号での確認と二者承認まで保留する」
取引先から振込先変更の連絡を受けた場合は、社長なりすましとは確認相手が異なります。振込先変更メールを別経路で確認する手順で、取引先の既存連絡先と登録口座を照合してください。





