家族にそっくりの声で「事故を起こした。今すぐ振り込んで」と言われたら、発音や間の取り方からAI音声か見抜こうとしてはいけません。
結論は、声ではなく要求の構造を見ることです。「急がせる」「秘密にさせる」「お金や認証情報を求める」「普段と違う支払方法を指定する」「折り返し確認を妨げる」が一つでもあれば、その場の対応を止めてください。
IPAは、本物と見分けにくい偽の画像・動画・音声が作られる状況では、重要な送金などの依頼を二重・三重に確認するよう案内しています。つまり、音の真偽を当てるより、別経路で依頼そのものを確認する方が現実的です。
5つの兆候を確認する
1. 判断する時間を奪う
「今日中」「あと10分」「電話を切ると手遅れ」と急がせます。緊急性が本物かもしれないと思うほど、電話の中で解決しようとせず、いったん切って確認します。
2. 他人へ話させない
「家族に心配をかけるな」「警察の捜査だから秘密」「銀行員には別の用途と言って」と口止めします。警察庁のオレオレ詐欺の例でも、金融機関で引出理由を聞かれたときのごまかし方まで指示する手口が示されています。
3. お金か秘密情報を求める
銀行振込だけでなく、現金の受け渡し、暗号資産、ギフトカード、認証コード、暗証番号、本人確認書類も停止対象です。「少額だから確認しなくてよい」とは考えません。
4. 普段と違う相手・方法を指定する
本人名義ではない口座、知らない弁護士や同僚、初めて使う決済方法が出たら、事情説明のうまさより不一致を優先します。声が本人に聞こえても、この不一致は消えません。
5. 切る・かけ直す・相談することを嫌がる
本当に緊急でも、本人確認のための短い折り返しまで拒む理由は通常ありません。「この電話を保留にしたまま別端末で」「表示された番号へすぐ戻して」と誘導された場合も、相手が示した経路は使わず、自分が以前から知っている連絡先を使います。
その場で使う短い返答
長く質問して相手の矛盾を探す必要はありません。次の一言だけ伝えて切ります。
今は送金しません。こちらからいつもの番号へ確認します。
相手が怒る、泣く、警察や弁護士へ代わるなどしても、同じ返答で終えます。詐欺師を論破したり、通話を長引かせて証拠を集めたりすることを優先しません。
切った後の確認順
- 連絡先に以前から保存していた本人番号へ電話またはメッセージを送る。
- 本人に届かなければ、別の家族、友人、勤務先など既知の連絡先へ確認する。
- 警察を名乗った場合は、相手が伝えた番号ではなく、最寄りの警察署を自分で調べてかけ直す。
- 不安が残る場合は警察相談専用電話
#9110または消費者ホットライン188へ相談する。
この確認順を事前に作る方法は、AI音声詐欺から家族を守る事前ルールで整理しています。
「AIっぽい音」は補助情報にとどめる
不自然な抑揚、背景音の途切れ、返事の遅れ、同じ言い回しの反復があれば疑う材料にはなります。しかし、音が自然なら本物、音が不自然ならAI、と確定はできません。通信品質、本人の体調、周囲の騒音でも声は変わります。
逆に、本人しか知らないはずの話をされた場合も安心材料にしすぎません。家族関係、旅行、学校、ペットなどはSNSや漏えいした情報から得られる場合があります。
送金してしまった場合は、判定を続けない
送金後に相手へ「AIだったのか」と問い続けても、資金回復の可能性は高まりません。銀行振込なら、振り込んだ直後に連絡する先と残す記録へ移り、振込先金融機関と警察へ連絡します。相手から返金手数料や救済費用を求められても、追加で支払いません。
結論:見分ける対象は音声ではなく、行動要求
AI音声詐欺を安全に止める基準は、声の完成度ではありません。緊急性、秘密、金銭・認証情報、普段と違う支払先、折り返し拒否を見ます。
一つでも該当したら、電話を切り、保存済み番号へかけ直し、別の人へ確認する。これなら、AI音声だったかどうかを確定できなくても、送金前に行動を止められます。





